キツネとオリーブ
1匹のキツネが、静まり返ったオリーブ畑をそっと歩いていました。
夜はビロードのようにやわらかく、月はオイルのように銀色に輝いていました。
枝にたわわに実った熟したオリーブの香りがして、
キツネの鼻がぴくぴく動きました。甘くて、同時にほろ苦い香り。
静けさを破りたくないかのように、ゆっくりと、そっと、
キツネはオリーブをひとつ、そしてもうひとつ味わいました。
実は苦かったけれど、葉がささやきました。
「焦らないで、小さな友よ。熟してこそ甘くなるのだから」
キツネは節くれだった根の間に横たわり、
星空を見上げて、ふと気づきました。
おいしいものが、すぐに食べごろとは限らない。
そして苦いものを、すべて避けるべきでもない。
そうしてキツネはオリーブの香りに包まれて眠りにつき、
時間だけが与えてくれる果実の夢を見ました。